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モータージャーナリスト柏秀樹氏によるNEWセロー、トリッカーのインプレッションをご紹介します。
排ガス規制の為だけのインジェクション搭載と思われがちですが、すばらしく進化していますので、参考にして下さい。
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★セロー/高速道路編
新しくF.I.(フューエルインジェクション)を採用したセローに乗ってきました。高速道路(関越自動車道)を走ってきたのですが、旧型セローと比較して全く違います! 新型のほうが断然いいですね! まず感じたのは、低速から中速に移行するときにキャブレター仕様は引っ掛かる感じがありましたが、それがスムーズに高速までつながります。それもまったりした加速ではなく、前にドンドン押し出されていく感じですね。
 始動性に関しても、キャブレター仕様のセローは暖機運転に時間がかかりました。とくに冬場はしばらく暖機しないと走るのが困難なほどでした。それが十分に暖機をしなくても最初からスイスイと走り出せる。この差を大きいですね。
 高速道路での走行でもう一つ感じたのは、私が所有する旧型セロー(しっかりと整備をした状態)は、100km/hあたりから上の速度域で、もう少し落ち着きがほしいと思っていました。新型セローではこれがきちんと修正されており、高速での直進安定性が確保されていて、不安がなく疲れずに走ることができます。つまりツーリング性能も向上しているのです。
 このように新型セローでは、エンジンの始動性、街中での利便性と実用性、高速の合流性能と直進安定性など明らかに向上しています。あまりにもよすぎて正直悔しい(笑)。新しいセローが欲しくなりました。
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★セロー/ストリート編
渋滞する国道16号をセローで走ってきましたが、新型セローは全くストレスを感じません。実は、アイドリング回転のままローギアに入れるとどれくらいスムーズに発進できるかを試したのですが、キャブレター仕様だと頼りなかったのが、F.I.では粘りがある上にトルクがあるので、発進がすごく楽になりました(特にビギナーライダーにとっては)。
 このつながりやすさはセローが得意とする林道でも武器になります。半クラッチに頼らず、アクセル操作に集中できるというのは林道での扱いやすさにもつながりますからね。またハンドル切れ角がありバランスが取りやすいので、ワインディングや林道だけでなく、街中でも気持ちよく走ることができます。新型セローは、新型エンジンとの相乗効果で、今まで以上にスムーズに気持ちよく走れるので、渋滞もストレスにならないでしょう。さらに燃費もよく、街中でも25km/L以上走ると思います。
 新型セローでは、旧型をそれぞれの領域で輪を掛けて扱いやすくした印象ですね。
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★セロー/モトクロスコース編
ノーマルタイヤ、コースはマディコンディション。びっくりです! キャブレター仕様のセローでは、今日みたいなコースで「すべるー」と思いパッと開けたときにエンジンがもう少しリニアだといいなと思うことがありました。新型セローはバッチリです! 今日のようなコンディションでも、ターンして斜面を上るときなど、アクセルを開けるとすぐに反応するし、パワーがリニアに発生して簡単に乗り切れます。
 またバイクはアクセルでバランスをとることがありますが、こういったコンディションでは、リニアリティが重要になってきます。新型セローはその点でうまくバランス補正ができるようになっており、オフロード性能はさらに向上していますね。
 WR250Fなどの本格的なエンデューロマシンもよいですが、足がついて、アクセル操作に対しリニアについてくるから20馬力(実際は20馬力弱ですが…)でも十分楽しめるんです。30や50馬力は確かに魅力ですが、使える20馬力は使えない30馬力よりも速いというのが私の実感です。
 私は普段トレーニングをしていません。パリダカもほとんどトレーニングしないで出場しましたが、走りきるポイントはライダーの技術をうまく引きだせるマシンかどうかだと思います。疲れにくく、パワーを引き出しやすく、扱いやすいエンジンと車体の設定がなければどんなに馬力があっても結局は速くないのです。その点新型セローは20馬力をへろへろになるまで使うことができます。
 腕はA級やB級のライダーには全然かないませんが、私はオフロードが大好きで、パリダカなど世界中のラリーを走ってきました。ですからスピードはともかくライディング技術には多少自信があります。そんな私にとってはこの乗りやすさが大きな武器になりますね。セローはすごくフレンドリーで、街中での足になり、林道ツーリングに使え、エンデューロでも上手い人が乗れば、WRにも勝てるかもしれません。
 セローのブレーキは、コンペティションモデルに比べてカツンとこない点もよいですね。ビギナーがパニックになったときにロックすることなく、きれいにブレーキが効きます。だからマディでもミスしにくいのです。敷居が低いのに、エキスパートが乗っても十分遊べるバイクがさらに進化したという感じです。

★色々な用途に適合するセロー
<女性や初心者のお客様>
 女性や初心者はもちろん、ビッグバイクに乗っている方にもこのセローはオススメです。ひとつは、走る、曲がる、止まるというバイクの基本を学ぶにはちょうどいいからです。そして、エンジンの低中速のピックアップがよく、前にスイスイ進むということや、従来であれば半クラッチを使う場面でもアクセル操作だけで解決できるという操縦性のよさも女性や初心者のライダーにとって購入のポイントになるのではないでしょうか。さらに高速道路の巡航でこの新型セローはサスペンションなどのセッティングがきちんと修正してあるので、以前よりも安定感があり安心して走行することができることもオススメのポイントです。

<市街地をメインに使用するお客様>
 買い物や通勤などでセローを使うときに、アイドリングのレベルからすぐにクラッチをつなぐことができる安心感がまずひとつ。そして5速40km/hから開けたときにちゃんとついてくる特性、つまりトップギアに入れたときに使えるレンジが広がったことも大きなポイントです。こうしたことからあらゆる道で使いやすく、それが楽しさや速さにつながっています。

<トレッキングで使用したいお客様>
 セローはもともとこの分野には強いバイクですが、以前のキャブレター仕様のときはもう少しつきのよさが欲しいと思っていました。それがF.I.になってきれいにつながるので、トレッキングにしてもベテランライダーはいままで以上に難易度の高いセクションにトライできるだろうし、ビギナーライダーはクラッチの操作に苦労することなくアクセルでバランスをとりながらセクションをクリアすることができます。繰り返しますが、より敷居が低くなり、エキスパートのライダーはよりハイレベルなことができるバイクになっているのです。若干数字的には重くなっていますが、それを感じさせないくらいトルクが豊かで、滑らかで、表情も多様になっています。250ccが260ccか270ccになったのではないかという感じがします。歩く速度から高速でのツーリングまで含めてまとまっており、性能の輪が2まわりくらい大きくなったという印象を受けました。
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★トリッカー/モトクロスコース編
フロント19インチ、リア16インチのノーマルタイヤで走りました。さすがに今日のコンディションは辛いですが、セローと同じでアイドリングレベルから低中高とつながりが非常にいいですね。バランス補正をアクセルで行うという話をセローの際にしましたが、トリッカーもパッとついてくるのでこれができます(タイヤは土が詰まって溝がない状態で非常にスリッピー)。
 トリッカーはそのサイズから女性や体力のないライダーにやさしい乗り物です。しかしトリッカーは扱いやすいだけでなくてパワーもそれなりにあるし、今回のF.I.を採用したことでさらにきれいについてくるので、ビギナーにより適したバイクになっています。F.I.は排ガス規制をクリアするのに必要なものであると同時に、ビギナーから体力の落ちた中高年のライダーにとってフレンドリーなバイクへと進化したのです。しかもアクセルを開ければ今まで以上にポテンシャルを引き出せる作りになっています。
 トリッカーはモトクロッサーなどとは全然違うものなので、ジャンプやスピードではかないませんし、セローの方がサスペンションのストロークやデイメンジョンの関係でオフロード走行を楽しめます。しかしトリッカーは十分なエンジンのリニアリティがあり、正確にリーンウイズするとか、力を抜くとかいろんな操作の基本を学び、ライディングを上達させるための教材としては非常によいと思います。街の中が主体で、たまにトレッキングするような場合はトリッカーが最適ですね。
 ということで、両方乗せてもらいましたが、両方楽しいという結論です。個人的にはセローが好きですが、トリッカーだったらトライアルごっこやエクストリームをするにはよいバイクだと思います。ほんとにオフロードバイクの充実した進化はオフロード好きの私としては大歓迎ですね。

★レベルに合わせた遊びに適合するトリッカー
<女性や初心者のお客様>
 いままでのトリッカーは、コンパクトで軽くて足つき性がよくフレンドリーで、確かに乗りやすいバイクでした。しかし新型トリッカーはさらにフレンドリーになりました。アイドリングからトルクが出て、クラッチが簡単につながってアクセル操作に専念できるのです。そのため、クラッチワークに不安があるビギナーや女性にはさらに勧めやすいバイクになりました。

<市街地をメインに使用するお客様>
 街中では、信号があり歩行者がおり車が走っていることから、クラッチ操作に気を取られると非常に危険です。しかし新型トリッカーはアイドリングレベルから低中高とつながりが非常にスムーズで、クラッチをつなぎアクセルワークに専念できるので、特に渋滞した場面ではセローよりもさらに快適です。通勤に使いたいという人にはピッタリだと思います。
 またサスペンションの動きが非常によいですね。シートが厚くなったこととアクセルに連動してサスペンションが非常によく動くので、以前のヒラヒラという走りから、スッスッと節度を持って走れるようになり安心感が高まっています。これはビギナーからベテランまでどんなライダーにもメリットになりますね。トータルのパッケージとしては、面白さをそのままに走りレベルが大きく進化しています。

<トライアルなど遊びにも使ってみたいお客様>
 少し難易度の高いところでは、21インチと18インチのタイヤと専用のセッティングを持ったセローには及ばない部分はあります。しかし上級者が乗ればセローに負けないくらいのポテンシャルを持っています。そしてビギナーが8の字を小さく回ってみたり、緩やかな斜面を上ったりおりたりするという場合や、ちょっとして林道であればセローよりもさらにフレンドリーになっていますし、楽しむことができます。

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